【読書感想文】東野圭吾 殺人の門【夢中になるイヤミス】

怖いもの見たさという感情

毎日幸せな気持ちで暮らしたい。そう願っているはずなのに、あえて己の心に波風を立てたくなるときがあります。無性に涙を流したくて、ジャケットに「全米が泣いた!」と大きな文字で書いてある映画をわざわざレンタルしてみたり、スリルを味わいたくて、とんでもない高さからとんでもない方向に向かって落ちていくジェットコースターに乗ってみたり、後でトイレに行けなくなるとわかっているのに、井戸から髪の長い女の人が出てくるドラマを見てしまったり。(上記3つの例うち、実際に行動に移した後に「よかった」と思えるのは1つ目の感動映画だけです。残りの2つは、必ず途中で「なぜ自分はあのときこのような決断をしてしまったのだろうか」と過去の自分を呪うことになります。)

しかしながら「怖いもの見たさ」という言葉があるように、恐ろしく感じられるものに対してなぜだか好奇心を抱いてしまうというのは、わたしだけではなく、誰しもが持つ気持ちなのではないでしょうか。

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殺人の門という、あまり穏やかではないタイトルの本書。今、わたしの手元にある本書のカバーには「イヤミス」という文字が並んでいます。ウィキペディアによると「イヤミス」とは、

読むと嫌な気分になるミステリー、後味の悪いミステリー

「推理小説」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。2020年1月13日 (月) 07:16 UTC、URL: https://ja.wikipedia.org/

のことだそうです。1つのジャンルとして定義されているということは、あえてイヤな気持ちになりたい人たち、イヤな気持ちになるのを期待して本を買う人たちが、この世の中に一定数以上いると考えて良さそうです。

読みたかったワケじゃないのに、止まらない

わたしがこの本を読み始めたのは2020年のまさに年明けでした。東野圭吾さんの感動できるミステリーが読みたいな、と思って書店をウロウロしていました。東野さんの著書には涙なしには読めない感動ミステリーがいくつもあるのです。なぜだかそんなわたしの目に止まったのが本書でした。ここで突然ですがわたしの個人的な情報をお伝えしますと、2019年末にロシアから日本に本帰国しました。数年ぶりの日本で迎えるお正月に完全に浮かれていたのでしょうか、カバーに書いてあった「イヤミス」という言葉を見落としていたのです。

さあ、日本に帰ってきて記念すべき一冊目の本。清々しい気持ちで読み始めます。しかし数分後、じわじわと主人公に押し寄せる不幸に、背中に黒いドロッとした液体がじわ〜っと広がっていくようななんとも言えない気持ちに。その後は主人公にイラッ、主人公の家族にもイラッ、友人にもイラッ。この先読んだらどこかでスカッとするのかと期待してみますが、全くそんなことはありません。ちょっと希望の光が見えたような気がしたら、また裏切られる。

新年早々こんなにイヤな気持ちになるなんて、なんなんだよ!そう思いながらふと表紙をよく見ると「イヤミス」と書かれていたものですから、それを完全なる自分のミスであるということに気付き、げんなり。こんな気持ちになるのならもう、とりあえず読むのを止めて、明るい気持ちになれそうな別の本を買って、まずそちらを読もう。そう思って寝てしまうことにしました。いわゆるふて寝です。

しかし布団の中で目をつむって眠ろうとしても、続きが気になって仕方がありません。主人公に幸せは訪れるのだろうか、それともまたダメな方向に向かってしまうのだろうか。暗闇の中でグルグルと考え込んでしまいます。そして我慢できずに再度本を開き、明け方寝落ちしてしまうまで読み続け、結局、他の本に浮気することなくストレートに、新年の最初の本が本書なったのでした。読み終わってしまった今、この本がわたしの2020年の運勢を示唆する本ではないことを祈るばかりです。

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