【読書感想文】藤田ミツ かみさまのおはなし【日本神話がぐっと身近になる絵本】

突然の神社クイズ

夫と京都に行ったときのこと。とある神社でお参りをして、お昼はお気に入りのうどん屋さんで食べることになり、そこからタクシーで向かうことにしました。その神社は観光名所だったので周りにタクシーはウロウロしており、簡単につかまりました。後部座席に乗り込んで運転手さんに目的地を告げた後、しばらくして運転手さんに「神社とお寺の違いって分かりますか?」と訊ねられました。

そう改めて聞かれるとよくわかりません。「年末に行くのがお寺で、年始に行くのが神社?」などという答えが頭をよぎるも、「いやいや、それががこのおじさんの求める答えであるはずがない」と考え込んでしまいます。こちらが答えに窮していると、「じゃあ、日本の神社とお寺、どっちが古いか分かります?」という問題に変更してくれました。二者択一問題。先程の自由記述問題よりは正解できる確率が格段にアップしました。

この問題に対し、げんだちょふはこう考えました。

神社は神道の施設、お寺は仏教の施設 → 仏教はインドからやってきた → インドの歴史は日本の歴史より深い → 仏教の方が古そう

一応自分の頭で考えてみた回答。やや自信ありげに「仏教の方が古いのでは?」と答えました。しかし間髪入れず、タクシーの運転手さんはこう答えました。「日本では神社ですよ。日本にもともと合ったのが神道で、中国からやってきたのが仏教ですから。」

「まさかの二択で外れた・・・」とがっかりするげんだちょふ。この後運転手さんはうどん屋さんに到着するまで神社について「神社は神様を祀っているんじゃなくて、自然を祀っているんだよ」「神社にあるしめ縄は雲を表していて・・・」など、神社豆知識をいろいろ教えてくれました。

「こっちが聞いてもないのになんでこんな話を始めたんだろうか」と怪訝に思っていると、おじさんはそれを感知したのか「まあ地域柄、1日貸し切りで観光案内をすることも多いので、そういうときはこういったお話をしながらお客さんを案内すんですよ。」と説明してくれました。そう言われると、おじさんにガイド代を払ったわけではないのにガイドをしてくれたわけで、先程の疑念から一転、なんだか得した気分になります。

得した気分になったところでタクシーはうどん屋さんに到着。おじさんに「ありがとうございました〜」とお礼を告げ降車し、うどん屋さんで「ちょっと頭良くなったわ〜」と話しながら、つるつるしたしたうどんをすすったのでした。

日本の神様ってどんな人?

この件以来、神社やお寺について何も知らないことが、頭の片隅でちょっと気にかかっていました。そんな時に出会ったのが本書「かみさまのおはなし」でした。

日本人なら「古事記」という言葉は誰でも知っていることでしょう。でも、「古事記には何が書かれているのでしょうか」と問われたらどうですか。テストのために覚えた「日本最古の歴史書」という言葉は浮かんできても、内容までは答えられない人が多いのではないでしょうか。げんだちょふもそうでした。

この本の冒頭にはこう書かれています。

「日本の国は いつできたの?」

「日本の国は だれが つくったの?」

それが 書かれているのが、『古事記』という 神話です。 

原作:藤田ミツ 復刻提案:渡邉みどり(2019年)『かみさまのおはなし』株式会社講談社(p.2)

神話、つまり、かみさまのおはなし。

日本を舞台に、どんな神様がいて、どんな性格で、どんなことをしたのかという物語が書かれています。もしかしたら天照大神(あまてらすおおみかみ)や、須佐之男命(すさのおのみこと)のやまたのおろち伝説は聞いたことがある人もいるかもしれません。出雲大社に祀られている大国主命(おおくにぬしのみこと)も登場します。

本書は原作の藤田ミツさんが幼稚園で読み聞かせをするために古事記を書き直したものです。そのため子どもでも理解できる文章で書かれています。さらに読み聞かせ用なので、読者に語りかける独特のリズムを持った文体になっています。

だからでしょうか、読んでいる最中は紙芝居や絵本を読んでもらっているような気持ちになります。ことばの一つ一つを丁寧に体の中におさめていく感覚です。

そして読み終わる頃には、頭の片隅にかろうじてあった程度の天照大神が、ももたろうと同じぐらい身近な存在に感じられたのでした。

あのタクシーのおじさんと、まともに話ができるレベルになるにはまだまだ遠いですが、一歩、日本の神社や神様について詳しくなれたような気がしました。

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