【読書感想文】柚木 麻子 BUTTER【あなたのその価値観の由来は?】

柚木麻子さんのBUTTERを読みました。

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自分が「こうあるべき」「こうなりたい」と思っていることは、本当に自分で考えたことなのか。それがこの小説を読んで一番考えさせられたことでした。

あらすじ

この「BUTTER」という本は、首都圏連続不審死事件という実際にあった事件をもとにした小説です。主人公は雑誌記者の町田里佳。取材で連続殺人事件の容疑者である梶井真奈美(通称カジマナ)との会話を繰り返すうちに感化され、少しずつ里佳自身の価値観が変わっていきます。

町田里佳は、どちらかというと自分がスレンダーな体型であることに自信を持っていました。基本的に食事にはあまり手間暇をかけないタイプ。お昼ごはんはコンビニで買ったサラダと春雨ヌードル。自炊はほとんどしません。一方のカジマナは美味しいものが好きで、見た目はぽっちゃり体型。逮捕される前は高級店で度々外食したり、高い会費を払って本格的な料理教室へ通ったりするセレブのような生活をしていました。一般的には美しいと思えない女性が次々と男性を魅了していたことで世間を騒がせたのでした。

里佳がカジマナに初めて会った時に言われたのが「バター醤油ご飯を食べろ」ということ。しかもスーパーに売っている安価なバターではなく、エシレバターという高級バターを使って。彼女によると、マーガリンは偽物でバターが本物であり、その違いがわからない人とはお付き合いしたくないというのです。

カジマナの言うことが里佳には理解できませんでしたが、取材のためと思い、言われたとおりにします。その後も彼女に言われたものを作って食べ、指定のレストランに食事をしに行き、その結果をカジマナに報告します。カジマナとの対話を繰り返すうちに里佳自身の考え方が変わり、里佳の周囲との人間関係にも変化が訪れます。

自分の価値観は自分で作ったものなのか

物語が始まった当初の里佳のように、「女性は痩せていたほうがいい」と思っている女性は多いと思います。中にはちょっとでも太ることに恐怖心を抱いている人もいると思います。その目指す体型が、自分で考えた結果、ちょうどよい体型だと結論づけたのであれば問題はありません。ですが、ほとんどの人は雑誌やテレビに出ている美しいとされる人を見たり、周りの人が言っている「わたし最近太っちゃったのよね」といった言葉に影響されて、痩せている方が良いと思いこんでいるだけなのではないでしょうか。

こんな風に、世間があるカテゴリーの人に対して「こうあるべきだ」という価値観を植え付けている例は少なくありません。女性は痩せている方が美しいというのはその一部にすぎません。男は強くあるべき、子供は無邪気であるべき等、いつの間にか私たちの頭に「一般的な」価値観が刷り込まれています。その多くは広告によるものだったり、子供時代に大人から言われたことだったりするのではないでしょうか。

そこに自分自身の判断はありません。

他にもある、考えさせられるポイント

この本には他にも考えさせられるべきポイントが点在しています。

カジマナを通して、自己評価と他己評価の乖離がある時に生まれる苦しみについて考えさせられました。

物語の中盤まで主人公の目を通して語られるカジマナは、犯罪者であるはずなのに「この人の言っていることは的を得ているのかもしれない」「わたしが間違っていてこの人が正しいのかもしれない」と思わせるほどの説得力があります。

しかし、物語の後半、里佳がカジマナの周囲の人々に取材を重ねるうちに、徐々に彼女の異質さが際立ってきます。彼女の口から出てくる彼女自身の話と、周囲の語る彼女の姿が、「本当に同一人物なの?」と思うぐらい違うのです。自己評価と他人からの評価がかけ離れています。カジマナ自身は自分にはすごく価値があって、男性が貢いでくれるのも当然であり、みんなわたしのことを好きでいると思っているのですが、実際にはそうではありません。

わたしには彼女が、自分の本当の姿に気づきながらも、それを自覚したくないためにウソを付き続けているように見えました。彼女が良い食べ物にこだわるのも、彼女の自信のなさの現れに思えます。彼女がおいしいとするものの多くは高級有名レストランの食事だったり、読んだ本の受け売りだったりするのです。まるでブランド品で身を固める若い女性のようです。

また、この本にはたくさんの登場人物と彼らの間の人間関係が描かれています。主人公とカジマナの関係に始まり、主人公とその親友、彼氏、同僚、母親、カジマナと家族の関係、料理教室のメンバーとの関係。それぞれの関係が作中で変わっていく様子は、心地よい関係とはどんなものだろうかと考えさせられるものでした。

本書には他にもいろいろ考えさせられる部分が散りばめられています。人によって響くポイントは異なるのではないかと思いました。

げんだちょふ
いろんな人と意見交換してみたいな〜
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