【読書感想文】内田英治 ミッドナイトスワン【自戒を込めて】

日本アカデミー賞など数々の賞を受賞した同タイトルの映画を、監督自らが小説化したこちらの本。書店で平積みされている文庫本たちの中に主演の草彅くんの顔が並んでいるのを見かけて、「事務所やめていろいろあっただろうけど活躍しててなんだかうれしい・・・」と応援したい気持ちで購入しました。

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そんな感じで購入したので、本の内容についてはざっくりと「トランスジェンダーの話」程度にしか把握していませんでした。ですが、読み始めてすぐに夢中になりあっという間に読了。読み終わった後、自分のLGBTの方々に対する認識が「間違っていた」とまでは言いませんが「甘かった」と感じました。

何が甘かったと思ったのか。これまで私はLGBTの方々についてそれなりに理解があるつもりでした。でもそれは所詮、外から見て理解したというだけの話で、実際には当事者にしかわからない生きづらさがあります。そこにはどうしても超えられない壁がある。そんな当たり前のことがこれまでの自分にはすっかり抜け落ちていたように感じました。

当事者以外が分かったような気になってはいけない

この本のあらすじを簡単に説明すると、

主人公の凪沙はトランスジェンダーで、田舎を出て新宿のニューハーフショークラブで働いている。ある日、親戚の中学生の女の子(一果)を訳あって一時的に預かることになる。最初は一果のことを邪魔に思っていた凪沙だが、だんだんと心が通いあっていく。

てな感じです。

ストーリーを読み進めていく中で、トランスジェンダーである凪沙に起こる出来事に対して「え?そんなことって今でもあるのかな?」と思ったシーンがいくつかありました。

例えば、家族には自分がトランスジェンダーであることをずっと隠してきた主人公が、女性の姿で地方の実家に帰ったシーン。突然現れた息子の姿を見た母親は、凪沙に「バケモノ」と言い放ちます。

わたしはショックを受けました。こんなことって今でもあるのかと。

しかしよくよく考えてみれば、自分の子供がトランスジェンダーであることを突然目の当たりにしてこういった反応をしてしまうのは、当然と言ってもいいかもしれません。

この本を読んだのとちょうど同じ頃にNHKのバリバラという番組を見ました。マイノリティーとされる方々が出演し、その生活を紹介したり、スタジオで当事者らがトークしたりする番組です。わたしが見た放送回のテーマは同性カップル。地方に住む2組のカップルの生活を取材していました。そのうちの一組の香川在住のカップルは周囲に自分たちがカップルであることを隠しているとのこと。その理由に、「姪っ子が自分のせいで学校でいじめられるかもしれないから。」と回答していました。

私がテレビを見たり本を読んだりしている限り、LGBTの方々に対する世間の理解というのは改善されていると感じていました。でも実際は今でのこの本の凪沙やテレビに出ていたカップルのように、日々生きづらさを感じながら生活している人がたくさんいる。

この本を読む前のわたしのように、当事者以外の人が「わたしはすごく理解している」「彼らを取り巻く環境は十分良くなっている」と思っているのはすごく危険なことなんだと思います。どうしたって当事者にしかわからない苦しみはあるのに、それを無視して「ほら、良くなってるよね?」と言うのは傲慢以外のなにものでもありません。

自戒を込めて。

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