【読書感想文】原田マハ 総理の夫 First Gentleman

原田マハさんの「総理の夫 First Gentleman」を読みました。

理想の総理大臣を描く

この物語は相馬日和(ひより)の日記という形で語られます。彼の妻の相馬凛子は日本初の女性総理大臣。日和は、いつになるかわからないけど将来的にこの日記を発見する誰かに素晴らしい自分の妻のことを伝えたいと、総理になった経緯、2人の出会い、総理大臣就任後に迎えるピンチの話などを、総理の夫の視点で書き残します。

日本初の女性総理大臣になる凛子は、どこまでも完璧な女性。素晴らしい経歴の両親のもとに生まれ、才女で経歴も申し分なく、正義感が強くて周囲からの信頼も厚い、おまけに美人であるという設定です。

読み始めた段階ではあまりの凛子の完璧さに「わたしと違いすぎる。感情移入できるだろうか?」と心配していました。しかしながら、読み進めるうちに「こんな総理大臣がいたら日本は盛り上がるだろうなぁ」という期待に変わり、小説の最後の山場で凛子が、働く女性の多くが直面する問題に悩んだ時には「諦めないで!」と心から応援することができました。

読み終わった後にこの作品に関する原田マハさんのインタビューを見つけました。そこに、なぜこのような人物設定にしたのかが書かれていました。

彼女には汚点がないという設定にしましたが、現実問題そんな人はいないと思うんですよ。これは小説の中だからできることだし、完全無欠の総理大臣が一人くらいいたっていいじゃないか、現実世界はうまくいかないから、夢を見てもいいじゃないかと。

原田マハ氏『総理の夫』インタビュー 前編 「相馬凛子は、優しいまなざしを持った理想の総理であり、女性の代弁者です。」

小説の中でだけでも理想を貫きたいという気持ちがあったんですね。

女性の働き方問題

この小説のテーマには日本の政治のあり方という面もありますが、それ以上に女性の働き方という社会問題が強く反映されていると感じました。

げんだちょふが小学生の頃には既に「男女雇用機会均等法」というものは存在し、社会科の授業で「男の人も女の人も平等に働けるんだよ〜」と習いました。その頃から漠然と「わたしも大人になったら働くんだろうなぁ」「結婚しても子供が生まれても働き続けるんだろうなぁ」と思っていました。

まさかロシアで専業主婦しているとは夢にも思っていなかったなぁ・・・。

わたしが会社員として働いていたのは大学を卒業してから7年程度でしたが、その間にも自分の働く環境が良くなっていると感じることができました。(あくまでわたしの経験です。もちろん働く会社によると思います。)しかし子育てをしながら頑張っている先輩を見て「大変そうだな」「わたしにあれができるのか」という思いは常にありました。

現在の駐在妻という視点から見ても、駐在妻に対して駐在夫という存在が絶対的に少ないという点で、性別に関係なく平等に働けていると言い切るにはまだまだ遠いのではと感じます。

この本が、例えば今から更に20年後の2039年に読まれた時に、わたしたちが「こんな時代もあったよね」と言えるように変わっていたいですし、さらにその次の世代には「本当にこんな時代があったの?信じられない!」と言ってもらえるような日本に変わっていたい、そう思いました。

そうなるためには、私たちの世代が頑張らないといけませんね。

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