【読書感想文】パク・ヨンミ 生きるための選択【脱北少女の物語】

わたしは何も知らなかった

本を読むということは、自分の知らない世界を知るということでもあります。

本屋さんで、表紙の女の子の強い眼差しが気になって購入したこちらの本。表紙の女の子は著者のパク・ヨンミさん。北朝鮮から韓国へやってきた、いわゆる脱北者です。

この本には彼女の半生が、彼女の言葉で紡がれています。幼少期の北朝鮮での暮らしから始まり、自分が北朝鮮人であることを隠しながらなんとか生き延びた中国での生活、その後脱北者として韓国へ、現在へ至るまでの経緯が書かれています。

とてもショックを受けました。わたしは北朝鮮について、あまりにも何も知らなかったし、知ろうと思ったこともなかったことに気付かされました。

もちろん、北朝鮮という国を意識することはありました。北朝鮮のトップがこんなことした、ミサイルがどうしたというニュースは、日本人であれば誰でも耳にするでしょう。でも、その先にある、北朝鮮に住んでいる人の暮らしについて想像が及ぶことはありませんでした。

  • 北朝鮮で飢饉が起こっていたこと。(今も状況はあまり変わっていないよう。)
  • 北朝鮮の人がどんな教育を受け、世界に対してどんな風に考えているかということ。
  • 中国の農村部で人身売買が行われていること。
  • 北朝鮮の人が脱北するには壮絶なルートを旅しなければならないこと。
  • そして、それを援助している人が少なからずいること。
  • 韓国へ渡れても、北朝鮮の人がそこに適応するには、少なからず困難があるということ。

げんだちょふが現在滞在しているロシアは、「近くて遠い国」と形容されることがあります。北方領土問題があるように、日本と国境を接しているくらい近い国。でも多くの日本人はロシアについてあまり知りません。

でも北朝鮮は、さらに「近くて、遠い国」でした。日本海を挟んで対岸にあるのに、その国の中のことは、ほとんどブラックボックスです。

この本を読んだ後に調べてみると、日本にも北朝鮮の難民を支援している団体があることが分かりました。日本にも、限られた形ではありますが、北朝鮮から脱北してきた方が住んでいるようです。

自分の意見を持てることの幸せ

本書にはたくさんの忘れられないシーンがあるのですが、一番印象的だったのは彼女が韓国に渡った後、ハナ院(脱北者のためのトレーニング施設)で受けた授業の中での話です。

その授業の内容とは、「自分の自己紹介をする」というもの。「自己紹介の練習ってどういうこと?できないって何?」と思う人も多いと思います。

先生に、「自分の名前、趣味を言ってください。」と教わるのですが、ヨンミさん、自分の名前は言えるけど、趣味がわかりません。自分の好きなこと?そんなものはない。先生に「じゃあ、好きな色は?」と訊かれても、何も答えられません。先生が「わたしはピンクが好きよ。」と言って初めて「わたしもピンクが好き」と答える。

この話から、北朝鮮の人に「自分の意思」が存在しないということが分かります。生活のすべてにおいて自分の意思で選択するのではなく、自分より偉い人が言ったことが、自分の正解になるのです。自分の好きな色さえ何か分からない人たちが、資本主義社会の、何でも自分で決めなければならない世界で生活するのは非常に大変なことだと思えます。

逆に考えると、自分の意見を国民に持たせないことが、独裁政府にとっては得策だと言えます。自分の頭で考えることができなければ、国民が政府の決めた方針に疑問を持つこともありません。

自分の頭で正解を考えるというより、教科書に載っている正解を覚える子が頭のイイ子とされる、日本の教育についても、考えさせられるところです。

本を読む時間がない人に

北朝鮮についてあまり知らない人には一度読んでみてほしいのですが、本を読む時間がない人には動画がオススメです。彼女がTEDやその他メディア、国際フォーラムなどでスピーチをしている動画がyoutube上にあるので、一度聞いてみてください。

こちらの動画、残念ながら日本語字幕がないのですが、英語字幕はある&シンプルな英語なので、ぜひ。

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